![]() ![]() --24分類法:全般-- Mタイプであった山本は、例えるなら名人的・職人的であり、特定の分野で飛び抜けた才能がある為、軍人にも多いタイプです。 しかし、どう努力しても、そもそもの視野が狭い為、大規模な組織を動かす総司令官には向いていません。事実、山本も自らの実戦指揮能力に疑問を抱いていたとも言われています。実際、Mタイプの場合、経営者の中でも個性の強い、ワンマン社長タイプが多い傾向があります。 しかし、視野の狭い反面奥が深く、集中力は並外れてありますので、山本の場合も全体を纏める総司令官ではなく、専門分野を活かした、一部隊の指揮官として陣頭指揮を行う方が向いていました。 一方のニミッツはKタイプですが、これは大企業の経営者やなどで求められる、大局的な視野の広さを持っており、段取りを考える仕事に適しますので、最も総司令官に向くタイプです。 特徴としては、NタイプやMタイプに比べると集中力が持続しにくく、考える時も行動する時も常に頭を働かせる(悪く言えば雑念が入りやすい)のが特徴です。 これら「才能の領域」の特徴からも、日米の海軍トップはまったく対照的な総司令官だった事が伺えます。 (人事:部下の起用) ここに両司令官の根本的な考え方の違いが見て取れます。 「下手なところがあればもう一度使う。そうすれば、必ず立派に成しとげるだろう」(山本大将) 「有能な人材を使わないのは不経済だ。しかし、長く使うと弊害が生じる」(ニミッツ大将) ![]() ![]()
![]() ![]() ニミッツの発言にある「弊害」とは、固定的な人事における一般的なマイナス面の意味と敵にパターンを読まれない為の両方を指していると思われますが、24分類の要素の一つである「天中殺理論」としても深い意味があり、偶然とは言え、的を突いている気がします。 「天中殺理論」とは簡単に言えば、人間の出番と休みについて認識し、それをうまくコントロールする事を説いています。 どんな有能な人間でも必ず調子のいい時と悪い時が周期的に巡ってきます。 一見すると予測不可能なこの現象を研究し、法則化したのが24分類の要素の一つである「天中殺理論」A〜Fの6タイプなのです。 (実際には、年周期の概念の他にも様々な形態で定義されていますが、一般的には主要6タイプだけでも十分に活用できます。) この「天中殺現象」、個人であればその範囲で済む事ですが、企業のトップや戦時のトップなどの場合は、集団を巻き込んでの大失態にも繋がる事が、このミッドウェイ海戦の検証を見ても実証されています。偶々ミッドウェイだけ?とんでもありません。レイテ沖海戦でも同様の現象が確認されています。(最近の企業で言えば、日産の業績とその役員たちの研究からも確認する事が出来ます。) ![]() ![]() さて、日本海軍の人事ですが、日本の山本司令長官(MDタイプ)は人事の偏りを相当注意していたらしく、自分を取り巻く参謀に関しては、敢えて考えの合わない人間を配置して居たようです。実際、参謀長の宇垣纏(KFタイプ)や作戦立案を担当した主席参謀の黒島亀人(KEタイプ)を配置し、大局的な視野で意見やアイディアを出せる人材(Kタイプ)を確保する事で、周囲や軍令部を納得させる事に成功しています。 ![]() ![]() ![]() ![]() 黒島参謀 Kタイプの参謀たちは、その視野の広さを活かして上司であるMタイプの山本を説得し、意見を封じこめる事が多くなったのです。 事実、主席参謀の黒島(KEタイプ)は、ミッドウェイ海戦前日にキャッチしていたアメリカ機動部隊の動向を、山本が「知らせた方がよい」との意見を遮って、空母「赤城」の南雲に連絡しませんでした。この時、山本は嫌な顔をしてムクれていたと言います。 ![]() ![]() もし山本ではなく、Kタイプの東郷平八郎(24分類:KF)だったら、自身の判断で決断を下し、黒島の意見など無視して、直ちに南雲艦隊へ連絡していた事でしょう。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() こんな話があります。日露戦争の日本海海戦で2日目の追撃戦の際、ロシアのバルチック艦隊が日本の艦隊に包囲され、午前10時半頃にとうとう降伏旗を掲揚しました。しかし、Kタイプの司令長官東郷平八郎(24分類:KF)は砲撃を止めませんでした。側近の先任参謀 秋山真之(24分類:NF)は進言しました。「長官、敵は降伏いたしました。発砲をやめましょうか?」しかし東郷は黙って敵を睨んだまま、一言も言わない。 「長官、武士の情けであります。発砲をやめてください」 しかし東郷は少しも動ぜず 「ほんに降伏したっとなら、艦をストップさせにゃならん。現に敵は、まだ前進しちょるじゃなかか」 秋山はそれ以上何も言えなかった。 ( 「良い参謀 良くない参謀」より ) この様にKタイプの司令官の場合は自身で大局的な視野によって判断出来るので、そもそも、部下(この場合はNタイプ)を頼りにしておらず、自分で迷うことなく決断が下せます。 ![]() ![]() 話を戻しましょう。24分類の違いは、組織の上下関係があったとしても、結果的に上司の判断まで狂わせる影響力を持っています。 敢えて嫌いなタイプの意見も聞くようにと、ある意味、感を頼りに配慮した山本ですが、本当の自分の欠点を分かっていなかった事が災いして、結果的には配慮で行った人事が、幕僚主導型と言う日本特有の最悪の組織を作り上げてしまいました。 ![]() ![]() さて、山本の参謀人事と対象的なのは、作戦実行の各部隊の司令官の人事です。驚いた事に全員山本と同じ天中殺タイプのDタイプだったのです。これも偶然にも見えますが、24分類法的には説明のつく事です。 同じ天中殺タイプとは気が合うので、無意識に同タイプを集めた事に他なりません。 ![]() ![]() 山本の人事は、意見やアイディアは幅広く取り入れ、実行部隊には信頼を置ける人物を選んだという、傍目には理想的な人事でしたが、自身も含め個々の性格や個性まではマネージメント出来ておらず、不十分でした。同時に自身がMタイプであったが為に、最も難しい人事だったのです。 ![]() ミッドウェイでの大失態のその後ですが、冒頭の発言に在る通り、山本は人事の更迭は行いませんでした。 その結果、天中殺の司令官がそのままソロモン海戦などに参加しており、負け戦が続く事になります。 ![]() ![]() ![]()
![]() ![]() 一方のニミッツに関する、Kタイプの司令官の特徴を捉えたエピソードがあります。 日本軍の占領する島のクェゼリン環礁攻略について、ニミッツが将軍たちを集めて意見を求めた時の話です。 一人ひとりに意見を言わせ、全員が作戦に反対し意見を述べ終わると、ニミッツは平然と言いました。 「では諸君、次の目標はクェゼリンだ」将軍たちはそれ以上反対は出来ませんでした。 このエピソードも前述の東郷と同じKタイプの総司令官の特徴をよく捉えています。 Kタイプの場合、そもそも部下の意見は確認程度としてしか捉えておらず、余程違う意見を言わない限り、覆る事はありません。 また、ニミッツやキングに共通しているのは人事に情を一切挟まない事でした。 失敗はもちろん、意にそぐわない結果を出せば直ぐに更迭されました。山本の様なもう一度チャンスをやる事はありませんでした。(これを徹底する事で、結果的に運の無い司令官を自然に排除する事が出来た様でもあります。) また、経歴や士官学校卒業時の成績、自分と合うかどうか等も二の次でした。 起用した司令官が成果を出せるかどうかが焦点であり、そこには年功序列や人間関係のしがらみは存在しなかったのです。 実際、無名だったスプルーアンスを他の将軍を差し置いて急遽、機動部隊の司令官のポストに起用するなど、日本海軍ではありえない人事を合理的に行ったのです。また、「危機に際して必要なのは、もっと攻撃的な司令官だ」との方針の下、士官学校時代の成績のあまり良くなかったハルゼーも起用しています。 この様に、目的を明確化した上で、徹底した合理化を行った事は、ある意味国民性も幸いしていますが、ニミッツの人事システムは大変効果をあげました。しかし、これものニミッツがKタイプでなければ成し得なかったでしょう。 (目的と手段の違い) ミッドウェイ海戦では作戦そのものに問題が有ったとも言われ、今も尚、議論されて続けていますが、実際の状況は複雑でした。ここでもう一度整理したいと思います。 ここに実際の作戦資料の、「作戦目的」に関する部分だけ抜粋して見ました。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() なぜ、南雲はミッドウェイ島攻略にこだわったのか?この作戦資料の意味を正しく解釈して見ましょう。 まず、作戦目的がミッドウェイ島の攻略である事はがハッキリ明記されています。 更にその目的は、アメリカ機動部隊を封止する事となっています。 最後に、ミッドウェイ島に基地を作る事となっています。 ![]() ![]() さあ、山本の部下である、南雲にとって何が一番重要だったのでしょうか? それは紛れも無く、ミッドウェイ島の攻略が南雲にとっての最終達成目的であり、一番重要な事でした。 なぜなら、作戦目的の二行目に確実に書かれている以上、ミッドウェイ島の攻略が果たせなければ、作戦自体は失敗した事になり、例え現れたアメリカ空母を全てやっつける事が出来ても、結論としては、事実上、作戦が阻止された形になるからでした。 ちょうど数週間前の珊瑚海海戦で日本は米空母を2隻も撃破したものの、最終目的であったポートモレスビーの攻略を中止に追い込まれた経験があり、その事も南雲の意識に深く焼付いていたと思われます。 実際、2行目が達成出来なければ、必然的に4行目も果たせなくなります。これは、敗北とまで行かなくても、作戦失敗である事は間違いありません。 山本司令長官から命令を受け、作戦行動を行うからには、作戦目的の達成が最重要事項である事は当たり前の事です。 また、一番の焦点となる作戦目的ですが、これを立案する上で、どこにいるのか分からないアメリカ機動部隊を第一目標にする事は不可能でした。 ただでさえ、10万人規模の艦隊を引き連れて太平洋の真ん中まで戦(いくさ)に行くからには、何か確実に得るものがなければなりません。当然、軍令部からの許可が下りることは有り得ませんでした。 従って、第一目標は所在が不確かなアメリカ機動部隊の捜索ではなく、ミッドウェイ島の攻略という、地図の上で確認の出来る具体的な目標になったのです。 さて、ここで「目的」と「手段」について、最確認してみましょう。 部下、南雲の「目的」は既に説明しましたが、山本の目的は何だったのでしょうか? 総司令官である山本の目的は、当然ながら戦争全体の視野で捉え、今回の作戦立案に至っていることもあり、最終目的が南雲とは違っていました。 実は、3行目にある、アメリカ機動部隊の封止が真の目的だったのです。そして、ミッドウェイの攻略はその目的を達成する為の手段に過ぎませんでした。すなわちミッドウェイ占領し基地とした上で、ハワイからアメリカ機動部隊を誘き出し、一気に叩く事がシナリオとして描かれていました。 実際、それをフォローするかの様に、日本を出発する前、作戦を立案した黒島参謀は南雲や草鹿参謀長ら機動部隊の首脳部に対し、万が一アメリカ機動部隊が現れた場合を想定して、半分の航空機は対艦攻撃を準備・待機するようにと、くどい程指示していたとの記録も残っています。 ![]() ![]()
![]() ![]() 南雲が作戦目的の本音と建前をどの程度理解していたかは、資料3の8:20分の決断を見れば分かります。 米空母発見の報告を受けた同じタイミングで帰ってきた第一次攻撃隊から、燃料が少なく直ちに収容の許可を求められ、結果的にそれを許可しています。 実はこの時の判断は源田中佐が行い、南雲はただうなずく事で決定していたのです。源田も戦後の回想で述べています。図上演習なら、迷うことなく敵空母への攻撃を優先させ、味方の損失はやむ得ないと考えただろうが、実戦ととなると生身の人間を相手にするので、ましてや厳しい訓練を見てきたかわいい部下たちに対して非情な決断を取る事は出来なかったと。 源田の判断はさて置き、司令官である南雲がこの決断を下したのは、この作戦の目的と手段が深く理解出来ていなかった事に他なりません。南雲にとっての目的は、飽くまでもミッドウェイ島攻略だったのです。そして、アメリカ機動部隊の封止は、その目的遂行を阻止しようとする機動部隊の排除の意味でしかありませんでした。 ![]() ![]() この「目的」と「手段」に関する定義については、人格DNAのバックグランドである学問『縦横家』の「軍略」にてハッキリと明記されています。 企業に置き換えて考えて見ましょう。 社長(CEO)の「目的(A)」と「手段(B)」があります。 社員(役員も含む)の「目的(C)」と「手段(D)」があるとしましょう。 ![]() ![]() ![]() 実に(B)=(C)という法則が成り立ちやすいのです。 上司がきちんと部下に対して説明しない限り、(A)=(C)は立場や次元の違いから、 容易には成り立ちません。 【結論】 ・真の目的を伝えきれなかったため、南雲長官らの間で誤解が生じた。
--- 実行部隊の司令官を分析 --- |
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K-タイプ ・個人才能で個人で実行できる才能 ・行動中に思考が入り集中でき難い ・現実離れした才能 その他 |
N-タイプ ・個人才能で個人で実行できる才能 ・行動中に思考が入らず集中できる ・日常生活に近い才能 その他 |
H-タイプ ・集団才能で相手が必要な才能 ・行動中に思考が入り集中でき難い ・日常生活に密着した才能 その他 |
M-タイプ ・集団才能で相手が必要な才能 ・行動中に思考が入らず集中できる ・日常生活の中で偏った才能 その他 |
A−タイプ (1936〜1937年は天中殺) ・自立心・独立心が強く、創業者タイプ。 〔天中殺の特徴〕 |
KA 草鹿龍之介 少将(参謀長) 木村進 少将 |
NA |
HA 小松輝久 中将(★★) |
MA フランク・J・フレッチャー 少将 |
B-タイプ (1938〜1939年は天中殺) ・ダイナミックでパワフルで自分の人生はj自分で切り開くタイプ。 〔天中殺の特徴〕 |
KB アーネスト・キング 元帥(★★★★) チェスター・ニミッツ 大将(★★★) 高須四郎 中将(★★) 西村祥治 少将 |
NB ハロルド・シャノン海兵中佐 |
HB |
MB |
C−タイプ (1940〜1941年は天中殺) ・破天荒でアウトロー、現実的なリアリストタイプ。 〔天中殺の特徴〕 |
KC ウィリアム・ハルゼー 中将(★★)入院 マイルズ・ブローニング 大佐(参謀長) |
NC |
HC |
MC |
D−タイプ (1942〜1943年は天中殺) ・アンカー的な役割を担う頼りになるタイプ。 〔天中殺の特徴〕 |
KD(天中殺) 山口多聞 少将 近藤信竹 中将(★★) |
ND(天中殺) 南雲忠一 中将(★★) 阿部弘毅 中将(★★) 白石万隆 少将(参謀長) |
HD(天中殺) ロバート・H・イングリッシュ 少将 |
MD(天中殺) 田中頼三 少将 山本五十六 大将(★★★) |
E−タイプ (1944〜1945年は天中殺) ・リーダーの素質を持ち,仲間と経済に恵まれるタイプ。 〔天中殺の特徴〕 |
KE 東條 英機 (内閣総理大臣) 黒島亀人 少将(主席参謀) 源田実 中佐(作戦参謀) |
NE |
HE |
ME 栗田健男 中将(★★) |
F-タイプ (1946〜1947年は天中殺) ・一度決めた事は険しくても自力で乗り越え頂上に立つカリスマタイプ。 〔天中殺の特徴〕 |
KF フランクリン・ルーズベルト 大統領 宇垣纏 少将(参謀長) レイモンド・スプルーアンス少将 藤田類太郎 少将 三川軍一 中将(★★) |
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