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アノミー現象とは

辞書では「社会的無秩序状態、社会的基準や価値が見失われ混乱している状態」とあるが良く解らない、インターネットで検索しても、いろいろ解説しているがもう一つ理解出来ない。
これはフランスの社会学者のデュルケムが提唱した用語であり、彼が『自殺論』においてこのアノミー現象を解明した。彼が自殺の研究をする中で気が付いたことは、経済が不況になると自殺者が増えるのは誰もが想像出来ることであるが、経済的に好景気で生活水準が急上昇した時に自殺者が増えることを発見し、この現象を以下のように説明している。つまり人間は生活が苦しいなどの外面的なことから自殺するのではなく、「連帯」を失った時に自殺する。
ビジネスに成功し、急に豊かになって生活スタイルが変わると、それまでの友人達との連帯感を失い、以前のように友達付き合いが出来なくなる。ところが新しい友人が持てるかどうかというとそれが出来ない。つまり以前から豊かだった人達からは「成り上がり者」とさげすまれるので、仲間に入って行けない。その結果この人は連帯をどこにも見出せず、自殺を選ぶというのである。

デュルケムはこの現象をアノミーと名付け、アノミーとは自分の居場所を見失った時に起きる現象で、心理学的には「アイデンティティの喪失」によって起きる状況であり、心の病気ではなく原因は社会にあると考えた。
このようにデュルケムが自殺の研究からアノミー現象を発見したが、これは「単純アノミー」であり、これ以外にもアノミー現象があって、中でも深刻なのは、世の中の「権威」が否定されることによって起こる「急性アノミー」である。その例が第一次世界大戦後のドイツであった。人々は無気力になり、無秩序を抑制することが出来ず、経済が益々悪化して行った。そしてそこに現れたのがヒトラーであった。
さて現在の日本は正にこの「急性アノミー」状態であり、親の権威・教師の権威・政治家の権威が失われ、無気力な人が増え、無秩序を抑制出来ず、経済が益々悪化するという方向にあると思われる。